2024-07-23 第304回参加歌

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自由詠

歌順1番 第2席

岡本まさ子

水であり
川であること
思い出したか
ふいに
堰を超える音

歌順2番

田中きみ

よくもまあ
こんなになるまで
生きてきた
じっと
しわを見る

歌順3番

山碧木 星

向かいの
三人掛の椅子ったら
まるで栗
真ん中の実が
ぺしゃんこ

歌順4番

酒井映子

暑い 暑いと呟くだけで
終わった一日
蝉は
命を懸けて
夜に鳴く

歌順5番

藍弥生

かわいい
しわなら
いいんじゃない?
と、この頃
開き直ってる

歌順6番

大貫隆志

いくつかの
落とし文と
いく匹かの
ミミズを
森に帰して下山

歌順7番

コバライチ*キコ

逃げる
文月
逃げて
銀河に紛れて
星屑 散らして

歌順8番

ま のすけ

指先で
チョンと押せば
それでもまだ
社会は反応してくれる
幽霊のような今の私でも

歌順9番

梅仕事
一粒づつを
返しながら
義母の手早い仕草も
想い出し

歌順10番

吉野正則

ケロケロケロッ
カエルの鳴き声って
いいもんだ
田んぼを吹き抜ける
風の匂いを感じる

歌順11番 第1席

関口有美

雑然と
しているが
掃除は
してある
胸の内

歌順12番

柳瀬丈子

…26、27、28、29…
さっきから ぶつくさ
何を数えているの?
…あとみっつ
だってシワ 32、でしょ!

歌順13番

今井幸男

すっぴんも
魅力的だが
ネイルで化粧した
人喰い指も
味わい深い

歌順14番 第5席

かおる

無くすか
生かすか
味がある方を選ぶ
和紙の皺も
顔の皺も

歌順15番 第3席

水野ぷりん

問われれば
少しお話なさる
いいなぁ
恥じらい爺さん
慎みにうっとり

歌順16番 第2席

範子

かつては
もてはやされた人気者
今はすっかり
嫌われ者
私?夏と申します

歌順17番

渡辺加代子

上手く伝わらないのは
理屈で感じる
わけじゃない
言葉で思う
わけじゃないから

歌順18番 第4席

町田道子

向かい側のホームから
一涼の風
へこたれた心が
一瞬
シャッキっとした

歌順19番

はるか

炎天下で庭仕事して死にそうになった
猫がウンチつけたシーツ洗った
夕方選挙に行った
何でもないありふれた
良き誕生日終了

歌順20番

萩原多恵子

蜘蛛の巣に
ひっかかった
かめ虫は
菜園荒らしの
キャツ  だな

歌順21番

可不可

不幸の連鎖
味変のつもりが激辛
飛び乗った電車逆方向
データ復元ムリだって
そんで……財布落とした

歌順22番

いわきやすお

怖い人は
シャイで優しい
怖い人が
笑ったら
ハグしたくなる

歌順23番

赤井 登

夏は
雑草
伸び放題
茂みの中に
蝉の声

歌順24番

美樹

鶯に心洗われる春
蝉時雨が掻き立てる夏
こおろぎ奏でる秋
雪が音を吸い取って
やれやれ静かな白い冬

題詠

歌順1番

岡本まさ子

検査で
おでこの皮膚切除
ひえ~
ダイジョウブ
皺で隠れますから って

歌順2番 第4席

田中きみ

しわしわの顔では
涙も汗も
横に にじむ
それでも
ときどき しわわせ

歌順3番

山碧木 星

笑うと
つい 生まれる
深い皺に
労苦を乗り超えてきた
矜恃

歌順4番

酒井映子

折り皺のあるお札から
使っている

ピン札ばかりが残った
使えないよ

歌順5番

藍弥生

皺だらけのお札
握りしめて
これでできること
してあげてって
拾った猫連れてくる人

歌順6番 第5席

大貫隆志

山塊は
たかが
地球の皺
けれど
奥深く優しい

歌順7番

コバライチ*キコ

「はて?」
なんて柔らかく
世の中に
皺を寄せる
ことば 

歌順8番

ま のすけ

まだ
シワさえ
湿ってそうな
みどり児
・・の写真 エッ??

歌順9番

皺の奥に
ひそめたもの
子等は
見つけるだろか
私の大事なへそくりを

歌順10番

吉野正則

そんな皴皴の浴衣
おかしいよ
オイオイ
これは
ちぢみって言うんだ

歌順11番 第1席

関口有美

シワクチャに
丸めて捨てられた
私の
詫びの
言葉

歌順12番

柳瀬丈子

忍びが握りしめていた
城の絵図面
皺を伸ばして
備えを点検
よし、今宵、夜討ち決行ぞ

歌順13番

今井幸男

樹液を吸って
ぱんぱんになった
翡翠色のアブラムシ    *翡翠=ヒスイ
わたしの皺を
労るように這う

歌順14番 第2席

かおる

会って
呑んで
喋って
笑って
笑って笑い皺

歌順15番

水野ぷりん

年寄りですからと
にっこり笑う
しわざんまいで
通しちまぉう
私のわがまま

歌順16番

範子

昔から苦手だった
アイロンがけ
今も
心や顔の皺も
伸ばせないまんま

歌順17番

渡辺加代子

椅子で母を待つ子の
ふわふわの顔
あんな時もあったんだねと
美容院の鏡に映る
皺顔を見る

歌順18番

町田道子

脳に
皺がたくさんあるは
誉め言葉
でもお顔には ね
喜ばれたり悲しまれたり

歌順19番

はるか

枝豆
投げるよ!
皺ないね
なんて
ウソばっか

歌順20番

萩原多恵子

シワシワの
いぶりガツコと
カマンベール
じっちゃんの口の中は
大都会

歌順21番

可不可

おかえンなさい
疲れた眼してるね
…ねえ
ワイシャツの皺
どうしたの?

歌順22番

いわきやすお

皺になった
千円札を
アイロンで伸ばしたら
「熱い!」と
野口英世ににらまれた

歌順23番 第3席

赤井 登

笑うと増える
太ると消えるが
痩せると増える
顔の
しわよせの方程式

歌順24番

美樹

お釣りに貰った
シワだらけのお札
たくさんの人の手を通り
色んな物と交換に
ご苦労さま