2024-02-27 第299回参加歌

※コメントは会員の方のみ記載できます

自由詠

歌順1番

範子

昨日は夏日
今日は冬日
桜やつくしも
出番が分からず
悩む今年の春

歌順2番

田中きみ

どっちを向いても
山だらけの里
大好きだった
あの山に 名前は
あったんだろうか

歌順3番

岡本まさ子

かたち
空に手で
なぞり
色を入れる
思いと同じ色を

歌順4番

酒井映子

声は聞こえるけど
言葉として
真摯に届いてこない
妙に暖かい
二月の風のようだ

歌順5番

今井幸男

葉を脱いだ
サクラの幹に
枝先に
北風の愛撫
春風の囁き

歌順6番 第5席

赤井 登

冬から
冬への
寒さの隙間
寒椿
艶をだす

歌順7番

観月

真冬のそれとは
違う
淡い青空
あなたに
会いにいこう

歌順8番

柳瀬丈子

ささささ――
渦巻く風に落葉の山
又風が来て
舞い上がるプラタナス
鳥になりたかったのかー

歌順9番 第2席

関口有美

薄目をあけたような
日差しのなか
新聞配達は
夕暮れをも
配って行く

歌順10番

高原美智子

人の心が
信じられないような
ニュースばかり
沈丁花の香り
変わらないよと囁く

歌順11番 第4席

数かえる

手に負えない
正義感が
身体を走る時
必殺仕事人に
私はなりたい

歌順12番 第5席

藍弥生




枠のないものが
好き

歌順13番

はなちゃん

新幹線でも飛行機でも
座ると私はシンデレラ
王子様はいらない
おひとり様が良い
帰りはカボチャで意気揚々

歌順14番

吉野正則

冬晴れの空
海に近づくほど
澄み渡り
青さを
増している

歌順15番 第4席

ま のすけ

人の
かたわらで
日常や街が
朽ちていく
愚かな欲の連鎖で

歌順16番

町田道子

雲ひとつない青の日
なのに
本は
斜め
読み

歌順17番

浜畑祐子

フリースのパンツを
脱ぎ捨てる
脱いだまんまの
そのまんまの
余韻

歌順18番 第1席

美樹

言わなかったことば
伝えなかった思い
心は
こんなに
重くなり

歌順19番

何故なの
何をしてるのだけを
やたら
突っこんでいた
私の青春

歌順20番

いわきやすお

友が
着る
春を待つ
後姿の
花絣

歌順21番 第1席

マリ子

捨てた未練が
ぎゅうぎゅう
詰まっている
わたしの
玉手箱

歌順22番 第1席

渡邉加代子

君の未来だ
誰かが賛成しても
反対しても
答えは常に
君の中にある

歌順23番

かおる

口の上に
小さなできもの
液体窒素で治す
小さな嘘も
冷凍凝固法で消えないか

歌順24番

山碧木 星

スマホの答なんか
どうでもいい
こうして
想像や思いを語りあうことが
答 だとおもう

歌順25番

萩原多恵子

蝶が飛び出す
鯉が飛び出す
3dビジョン
遅刻しそうな
待ち合わせ

歌順26番

大貫隆志

新聞を閉じて
テレビを消す
静かな一日が
要るのだろう
子どもの泣き顔は見たくない

歌順27番

はるか

前に座ってる7人
全員スニーカー
全員スマホ見てる
乗ってみたい
50年後の電車

歌順28番 第3席

コバライチ*キコ

冬空を
惑う星ぼし
自転して 公転する
その孤独
とてつもなく

題詠

歌順1番

範子

震えるくらい
冷たいのに
窓の向こうの山から
朝が覗いている
渋々ベットからあいさつ

歌順2番

田中きみ

ダムで
たんぼが沈んだ
山が削られた
亡父の好きな
山だった

歌順3番

岡本まさ子

土地に名山あり
故郷の鳥海山
四国石鎚山
伯耆大山
筑豊の盟主福智山

歌順4番 第4席

酒井映子

あれは
我が家の屋根
がれきの山 と
言わないで!
能登の人は叫ぶ

歌順5番 第1席

今井幸男

山姥だって
恋をする
暮れなずむ
深山の峠を
紅に染めて

歌順6番

赤井 登

中仙道の
馬込宿
山の中

座っている

歌順7番 第4席

観月

おーい!
大声で叫んでも
返ってこない
やまびこと
あの春の日と

歌順8番

柳瀬丈子

百名山
手帖に記し      *記=しる
登っては、一つづつ
朱を入れていた
あの人を偲んでいる

歌順9番

関口有美

山歩きは
無心になって
心と
体が
合体する時

歌順10番

高原美智子

登山電車のおかげで
私にも吸えた
ユングフラウの
透明な空気
心のどこかに

歌順11番

数かえる

東京ビルの
谷間をぬって
山に囲まれた
盆地につけば
私の故郷

歌順12番

藍弥生

目の前に山があったら
がんばって登る
穴掘ってトンネル作る
遠回りして麓を歩く   *麓=ふもと
だまってずっと眺める

歌順13番

はなちゃん

険しかった…
だけど
頭と心の間のこの辺が
ワクワクドキドキするんだよね
だからまた次の山にチャレンジ

歌順14番

吉野正則

おぼろげな
記憶から
季節を駆け抜けた
ドラマを語る稜線
私の中に広がる山脈    *山脈=やまなみ

歌順15番

ま のすけ

ぐるりと取り囲む
乾いた
白い山を想う
隣りの
緑と水の星の窓辺から

歌順16番

町田道子

あの空の
雲の
むこうに
みえるはず
私の心の中の山々

歌順17番

浜畑祐子

備えのよろしい
クライマー(登山家)たち
披露するのは
あっぱれな
のぼりっぷり

歌順18番 第5席

美樹

山にエサがないから
里に行った
ヒトがこわいから
あばれた
クマだって生きてるんだから

歌順19番

どんなに忙しくても
毎日 一回は
山のことを
考えると云う
師に出会った

歌順20番

いわきやすお

山盛りにした
氷見うどんをすする
立山連峰のような
凛とした歯応えに
北陸の強さを感じた

歌順21番

マリ子

はじめから
山には
勝てないこと
わかっていたはずなのに
好きになった

歌順22番

渡邉加代子

山形新幹線つばさ
シルバーカラーE3系
お祭りで
孫にと言って作った
お気に入りの缶バッジ

歌順23番 第2席

かおる

高すぎる目標は
慌てると
高山病になる
一歩ずつ
ゆっくり登る

歌順24番

山碧木 星

変われ
青信号よ
山高帽を放り投げて
フリ フリー
ジェンダーフリー

歌順25番

萩原多恵子

ゆくゆくは
消えてしまう
山小屋の雪
キラキラと
春を呼ぶ

歌順26番 第2席

大貫隆志

隠しごとを
抱えて
一面の
山を抱き
山に抱かれる

歌順27番 第3席

はるか

しゃりしゃりと
枯れ葉踏みしめ
ほつほつと山道を歩く
来た道を
振り返りながら

歌順28番

コバライチ*キコ

山なみに
光あつめて
溢れ出す
その瞬間を
覚えおくべし