2021-11-16 第272回参加歌

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自由詠

歌順1番

コバライチ*キコ

広すぎる霊園は
空も地も
吹き寄せの妙
古老の語りも
赤黄橙枯葉色

歌順2番

柳瀬丈子

片抜手すべらせ
白波も立てず
古式泳法で
沖へとむかう
父の幻

歌順3番

吉野正則

最先端の
新車より
思い出重視で
また
車検

歌順4番 第4席

岡本まさ子

渋くてざらり
熟すまでは
時が要る
自由と同じ
ラ・フランス

歌順5番

赤井 登

真っ黄色
ツワブキ
十二・三枚の
花びらで
笑顔ふりまく

歌順6番

酒井映子

冷凍保存したままの
あの頃の思い
今更 解凍はしない
粉々に砕いて
海に捨てよう

歌順7番

数かえる

鶏頭のような
怪気炎を昇らせ
大都会を成敗して歩く
勧善懲悪気質に
ほとほと手を焼く

歌順8番

山碧木 星

匂いとは
それぞれがもつ
あたたかさ
その道のりを
嗅ぐ

歌順9番

大貫隆志

あの日
私に芽生えたもの
根を張り
枝を広げ
私を覆い隠している

歌順10番

かおる

雑草と呼ぶけれど
草の名前を
知らないだけ
もやもやな気持ちも
名前を知らないだけ

歌順11番

平井敬人

お釣りを手渡してくるから
ちょっと触れそうで
ドキッとしたよ あの頃
もう慣れてしまったね
コロナにも恋にも

歌順12番

可不可

「あなた 詩人ね」
現国教師の言葉
でも後で思い知った
詩心の賞味期限
長くないって

歌順13番

関口有美

診察室を出ようとすると
あっ、本 と
私の忘れ物まで
見てくれた
医師

歌順14番

藍弥生

古風な処と
斬新な面が
同居している
そんな人に
憧れる

歌順15番 第2席

子が先に逝く
噴き出るもの
闇に揺れる
オーロラのように
ほえ止まず

歌順16番 第4席

田中きみ

古いもの
忘れた頃に
現れる
新し気な      *気=げ
顔をして

歌順17番

観月

揺れる心は
白とも黒とも
言い切れない
グラデーションの
中で泳いで

歌順18番

いわきやすお

湯船に
マリーンブルーの
入浴剤を溶かして
夏の海を
呼び戻す

歌順19番

渡邉加代子

言わないと決めたか
言う機会が無かったか
忘れたか
墓場に埋めた
秘密というもの

歌順20番 第1席

町田道子

ちゃんと見えていたものが
あやふやになってくる
心が
見たいものだけを
映し出していくようになって

歌順21番

大橋克明

教養も知性もある
女性が
食器洗いに
洗剤を使えないという
病的潔癖症

歌順22番

今井幸男

空気を読むのを控え目にすると
自分の本心 くっきりで
自分さがしゲームは
できなくなってしまうけど
気分は晴れ晴れ 風光る

歌順23番 第5席

寒苦老

懸命に生きた
真剣に恋した
思い残すこと
微塵もないと
微笑みながら

歌順24番 第3席

はるか

知らない町の路線バス
知らない人になって
知らない車窓の秋を
一人愉しむ
踊る枯葉が後を追う

題詠

歌順1番

コバライチ*キコ

枯葉踏む
足音だけが
響いてる
懐古するには早すぎるけど
いいやつだったよ、君。

歌順2番

柳瀬丈子

古くなったセーターに
赤い大きなハートを
アップリケ
ヨガ教室の仲間達
何と云うか

歌順3番

吉野正則

夜のバスが
私を乗せて
走る
寄り道は無し
古き都に魅せられて

歌順4番

岡本まさ子

古鏡は
故郷のお菓子
「こきょう」と
読むんです
昔を思う気持ちです

歌順5番 第5席

赤井 登

古い町並み
ぷらぷらと
歩くと
暮らしの匂い
座ってる

歌順6番

酒井映子

この本を読んだ人は
泣いたのか
笑ったのか
古本屋で手にした
一冊

歌順7番 第2席

数かえる

太古より堆積された
氷河も氷床も
少しづつ溶け出し
愚かな人間を
見切り始めている

歌順8番

山碧木 星

お古に
見せかけて
差し出された
グローブ
嬉しかった少年

歌順9番

大貫隆志

焼きつくとは
こういうことか
この角を曲がるたび
古い痛みが
蘇る

歌順10番 第5席

かおる

古い古い
足踏みミシン
もうないけれど
使い方は
身体が覚えている

歌順11番

平井敬人

古ぼけた写真のもや
頭に広がる景色のもや
二重のフィルターで
あの頃はファンタジー
君が手をふった

歌順12番

可不可

スマホ漬けの若者よ
時代に流されるな
すぐに来るわよ
〝メルカリ〟が
古語になる日

歌順13番 第1席

関口有美

遠い眼をして
古い話が始まる
いつの間にか
その 昔に
連れて行かれた

歌順14番

藍弥生

子どもたちは
カビの匂いと
言うけれど
古書の中にいると
妙に落ち着く

歌順15番

案ずる親を
笑顔でふるいとふるいと
たぶらかし続けた子
その遺影も
変わらぬ笑顔

歌順16番

田中きみ

古くなったら
この顔
よく見れば
ばあちゃんの
あの顔だ

歌順17番

観月

「古新聞〜
古雑誌〜
ボロっ布〜」     *布=きれ
気付くと
街から消えていた声

歌順18番 第3席

いわきやすお

トリセツもない
古い型番の人間
まだまだいけると
人生モーターを
回している

歌順19番

渡邉加代子

昭和の嫁入り道具の
着物
出番なく
貰い手もなく
ただ古くなる

歌順20番

町田道子

古い手帳を
紐解くと
出てくる 出てくる
映画や芝居
思い出のかけらなど

歌順21番

大橋克明

鏡で自分の顔と体型を見たら
ペンネームを
里山の古狸
にしようかなと
真剣に考えています

歌順22番

今井幸男

私の今を牽引しているのは
古い皮膚に包まれて
古々臓腑と         *古々=ふるふる
ともに暮らす
フレッシュ・ハート

歌順23番

寒苦老

古い写真に
火をつけた
若かりし頃
裏切った彼
好きだった

歌順24番 第4席

はるか

お気に入りのTシャツとかけて
古女房と解く
どちらも
くたびれて色褪せていても
捨てられない