2025-10-28 第319回参加歌

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自由詠

歌順1番

数かえる

独りぽっち
10月なのに
こんな寒空なら
明日は
きっと風邪だろう

歌順2番

はなちゃん

目標は
ゆる~く楽しく楽しそうに
「楽しそうに」は
見栄かもね
まだまだ修行中

歌順3番

みごとな夕焼けを
賞でながら
ちょっぴり
あこがれもあり
秋の暮れ

歌順4番

美樹

やんちゃだったアイツも
おしゃまだったアノコも
見渡せば
みんなそれなり
還暦同窓会 

歌順5番 第3席

岡本まさ子

たまに
跳ねっかえりもいるけど
かさに
思い 隠してる
森のきのこ

歌順6番

可不可

古いメディアは見ない
動画は倍速で観る
フェイクとアルゴリズム漬け
それでいいのか
今の若者よ

歌順7番

コバライチ*キコ

虫集く           *集=すだ
地球へようこそ
レモン彗星
平城京より
灯りは増えたか

歌順8番 第4席

関口有美

入ったり
出たりしながら続く
大縄跳び
ゆかいな会話も
同じだね

歌順9番

秋葉 澪

期待してないときの
思いがけない返信は
有頂点キャンディ
その味当日まで
長持ち

歌順10番

萩原多恵子

額さすり
さよならを
いわなきゃ
ならない
荼毘の夫          *夫=つま

歌順11番 第1席

斎藤範直

クリップが背負う
たった一つの運命
くねくね捻り一本の
まっすぐな棒に
戻してみた

歌順12番 第5席

藍弥生

どんなに
高く翔んでも
着地が大切
そこで転ぶことは
案外多い

歌順13番

田中きみ

高原の
星の宿
三人で見上げた
満天の星空
天の川

歌順14番

柳瀬丈子

トチの実ポトン
見上げれば
枝移りするリスの尻尾に
秋の風
そより

歌順15番

ま のすけ

熱に乱され
失いかけた
季節感を
一羽のジョウビタキが
呼び覚ます

歌順16番

吉野正則

老いて益々盛ん
与えるものがあり
人に求められている内は
まだまだ
楽しまなくちゃ

歌順17番

いわきやすお

五円硬貨
くすんだ黄金色が
財布の中で
小さな音を立てて
一匁ブルース

歌順18番 第3席

範子

出番をずっと待っていた
秋なのに
冬が追い抜こうと
迫ってきた
秋よ 負けるな

歌順19番 第3席

はるか

ベランダでついた
ため息を
不意に秋風が
連れ去った
明日はいい日になるかな

歌順20番

酒井映子

笑い声が溢れていた
若い季節の友の輪
歳月は巡って
今 秋の日は
白く暮れる

歌順21番 第2席

渡辺加代子

道端の
小さな落し物に気付く
私 背中まるめて
下むいて
歩いている

歌順22番

町田道子

あっ
金木犀の花
大きく
円を描くように
散って 秋ですよって

歌順23番 第4席

山碧木 星

痛み 悩み 不条理を
抱える人に
詩歌は
やさしい
「私をつかいなさい」

題詠

歌順1番 第5席

数かえる

逃した終電
酒に壊れた
泥人種に
新宿駅の改札は
とても無口だ

歌順2番 第3席

はなちゃん

昨日まで生きてきた
今日も生きている
明日も生きよう
それだけで十分です
終 わ り

歌順3番

生きること
始終の中に
挟まれて
今年の秋も
暮れて行く

歌順4番 第2席

美樹

読み終えて
ヤレヤレと本を閉じる
最後のページを
閉じ難いのが
自分にとっていい読書

歌順5番

岡本まさ子

編糸の末端を
閉じて終わり
冬は四季の終り
起源を知ると
機嫌も良くなる

歌順6番

可不可

長閑な物語の時代は
終わりました
――昔々日本には
熊という動物が
おりましたとさ

歌順7番

コバライチ*キコ

終の住処は
多摩のキャンパス
宇宙にまで聞こえるほどに
鳴いたそこは
選んだ場所だったのか

歌順8番

関口有美

ああ
こうだったのか
そういうことだったか
高令は気付きの期
まだ 終われない

歌順9番

秋葉 澪

足を開いていたら
生きている
閉じていたら命の終わり
地面の蝉
足は門

歌順10番

萩原多恵子

夏の終わりは
摂氏32度
という
10月になる

歌順11番

斎藤範直

あんな夏ですら
終わってみれば
追いすがりたくもなる
見るもの聞くもの哀しい
秋の心

歌順12番

藍弥生

我家の子育て
人生終る時までに
つじつま合わせれば
いいからネ
私たちもういないし

歌順13番 第5席

田中きみ

終り
から始まる
あらたなこと
心変わりとか
新しい恋とか

歌順14番

柳瀬丈子

終が出ても       *終=エンドマーク
すぐには立ち上れない
映画「国宝」
三時間有余の
余韻に浸っている

歌順15番

まのすけ

冬まだ来            *来=き
何事も
ないまま終わる
何事かを
そっと願った日

歌順16番 第2席

吉野正則

明日が見えそうな
今日の終わりに
背伸びをしても
何も見えない
明日は明日の風が吹く

歌順17番

いわきやすお

人生の終着駅に
近づいたけれど
我執をのせた
各駅列車に乗り換えて
きびすを返す

歌順18番

範子

掃除し終わって
お茶でもと持っていた
グラスを落として割った
このバカ!と
自分に向かって叫ぶ

歌順19番

はるか

終わりと始まりの狭間で
もがいていた君が
また歩き出した
遅れて来た
秋と一緒に

歌順20番

酒井映子

Aが潰れても
絶望することはない
Bが控えている
終着駅は
始発駅なのだ

歌順21番 第1席

渡辺加代子

悪意に取るから
気分が悪い
善意に取れれば
ありがとうで終われる
考えろ 頑張れ 私

歌順22番

町田道子

終りの
始まり
って
新しい
道への第一歩

歌順23番 第4席

山碧木 星

秋刀魚が帰ってきた
烏賊が戻ってきた
よくぞ
黒潮大蛇行
終息